遺言について

遺言書を作ると、その遺言は法律上のルールである法定相続分に優先して効果を発揮することになります。そのため、遺言を作成した人は、自分の意思に沿うかたちで財産を(相続の際に)相続人に承継させることが可能です。

相続において最も争いが起こりやすいのは、相続人の間の考え方の相違です。特に「お父さん(お母さん)は、そうは思っていなかったはずだ」という意思のぶつかり合いは紛争の要因になりやすいため、遺言によってどのような思いから誰に何の財産を遺しあげるのか、しっかりと説明してあげることが争いの予防にも役立ちます。

また法律上有効な遺言書が作られていれば、相続手続きで非常に手間のかかる遺産分割の手続きを経ずとも相続が可能になることから、残される相続人の負担も大幅に軽減させるメリットもあります。

遺言書の種類

遺言は普通方式と特別方式に分かれますが、特別方式のほうは船舶で遭難した際の遺言などが該当する特殊な方式のため、ここでは一般的に活用される機会の多い普通方式の遺言書について、種類を見ていきます。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言を残す人が自分の手で直接に(文字通り「自筆」で)遺言内容を書いて作る遺言書です。もっとも簡易に作ることのできる遺言書ですが、そのぶん、法律上の効果を発揮するように過不足なく書き上げることが意外と難しい(そのため、遺言書を書いて遺したと思っていても、実際に相続が発生してみると遺言書が無効と判断される)ため、自筆証書遺言の形式で遺言書を作成するときには十分な注意を要します。

有効な遺言書となるための主な注意点は、以下のとおりです。

  • 遺言者自身が自筆で遺言内容や日付、氏名を書くこと(※)
  • 遺言者自身が署名・押印すること

遺言書の日付は封筒ではなく、遺言書自体に記載するようにします。また日付はどの遺言が有効であるのかの判断材料ともなるため、「○月吉日」などではなく年月日を具体的に記載する必要があります。

署名・押印については、遺言者が単独で行います。夫婦で一緒に1つの遺言書を作って連名で署名・押印をしてしまうと、その遺言は自筆証書遺言として認められなくなってしまいます。

押印については認め印でも構いませんが、できれば実印を使うほうが無難です(シャチハタなどのゴム印は極力避けましょう)。あまり簡易な印鑑を使ってしまうと、争いを起こさないように遺した遺言書の真偽に疑問を持たれて、要らぬ争いが生じてしまう危険があります。

※以前は財産目録まで全て自筆である必要がありましたが、民法の相続に関する条文が改正され、パソコン等で作って印刷した財産目録や、法務局などで取得した登記事項証明書や通帳のコピーに署名・押印することでも有効、という扱いになりました。

公正証書遺言

自筆証書遺言は自分だけで遺すことができる手軽さがありますが、逆に言えば誰もその遺言書が法律上の形式に合致したものであるか確認していませんから、相続の際に無効と判断されて無意味に帰する弱点があります。

そのため、しっかりと遺言者の意思で財産を相続させたいときは、公証役場を利用して作成する「公正証書遺言」の活用を検討することになります。

公正証書遺言は、公証役場の公証人と相談しながら有効性も確認して内容を詰めていきますが、遺言書としての内容が確定したら、公証役場で証人2人が立ち会いの下で遺言者・証人全員の署名押印で作る形式の遺言です。

このように説明すると、なんだか仰々しい手続きのもとに作られる遺言書という印象を抱かれるかもしれません。しかし、実際は遺言書についてしっかりと相談できる公証人を中心に、そこまで堅苦しい雰囲気にならず親身になって作ってもらえることが多いです。

公正証書遺言の手数料や証人

公正証書遺言を作る場合、遺言内容などによって公証役場に手数料を支払わなければなりません。この点、何のコストもかからない自筆証書遺言と比較するとデメリットともいえますが、公正証書遺言は前述のとおり無効になることがほとんどありませんし、遺言書の写しも公証役場で保管してくれることから、後日の紛失に対しても予防できるメリットがあります。

なお、公正証書遺言を作成するときは、公証役場で2人の証人の立ち会いを求められます。この証人は、相続人となる人など利害関係のある人は指定できません。

また守秘義務のない人に証人を頼んだことで、相続前から財産に関する諍いが生じてしまっては、本末転倒です。

さらに、公正証書遺言を検討するときは、遺言書として法的に有効であるかという問題以前に、その内容で思ったとおりの相続を実現できるかという問題に悩んでしまうこともあるでしょう。

そのようなときは、弁護士や司法書士、行政書士などに遺言書の起案から関わってもらい、公証役場で必要となる証人についても受けてもらえるか(他に適切な証人を手配してくれるか)も含めて相談してみるのもよいでしょう。

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